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< 大連印刷工場(住友カラー印刷工場)視察報告 >
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■ 大連概要
大連市は、大連は中国の東北地方(旧満州)、遼東半島の最南端にある港町で、東は黄海、西は渤海、北は広大な東北平野に隣り合い、重要な工業・貿易の要所となっている。大連は、ほんの100年前まで、小さな漁村であったが、日清・日露戦争を契機に交通の要所として発展が始まった。80年代には、沿海開放都市および政令指定都市に指定されて急速に経済発展を遂げ、さらに90年代には、郊外に4つの国家級対外開放区(開発区、保税区、金石灘リゾート区、ハイテクパーク)が指定され、外資系企業の進出が加速度的に増加した。日本とは地理的に近いこともあり、現在2000社以上の日系企業が大連に進出している。この現状を踏まえてか、大連の大学生が外国語を選択するに当たって、およそ6割が日本語を選択しているという。大連の人口は、550万人。1人当たりの年間総生産額は、35000米ドルで、これは全中国平均の3.5倍に相当する。
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高層ビルが立ち並ぶ大連市街地
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■ 住友カラー印刷工場見学
今回、見学したのは、大連市のほぼ中央、大連空港のほど近くにある「住友カラー印刷工場」である。工場の敷地面積800u、全従業員60名、投資額700万元(約1000万円)、日本で言うと、独立資本で個人経営の会社である。大連空港からバスで15分ほど、風景が住宅地から工場に移り変わった場所に「住友カラー印刷工場」はあった。建物は個人経営の会社にしては相当な広さを有するが、あまり新しくはないので、以前使用されていたものを買い取ったものと思われる。工場に到着してまず目に入ったのは、入り口に置かれた「熱烈歓迎日本印刷代表団・・・」という看板。この看板の文句に違わず、住友カラー印刷工場の社長ラン氏には非常に丁寧に対応して頂いた。ラン氏は、日本に留学した経験を持ち、日本語が堪能であり、終始日本語による説明を頂いた。
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「熱烈歓迎」の看板
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社長のラン氏は日本語が堪能
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工場内の応接室に通され挨拶、名刺交換を済ませた後、早速、工場内の設備や作業の様子を見学した。工場の中心に置かれた4色カラー印刷機を中心に、工場内の全工程を20分ほど見学した。印刷機は、ハイデルベルグの枚葉小型オフセット印刷機(GTO−52)が2台、同じくハイデルベルグの枚葉菊判裁オフセット印刷機(スピードマスター)が1台、合計3台という構成である。
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ハイデルベルグ・スピードマスター
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断裁、綴じ、製本、加工などの機械は、旧式のものが目立つが、機械を購入するより、人手で作業した方が安上がりだという。工場には、十分すぎるほどのスペースがあり、大量作業や資材及び製品のストックには相当余裕がありそうである。一通り工場を見学しての感想であるが、我々東京の中心で印刷業を営む者とすれば、技術的な面で参考になるものはなかった。考えられるのは経営的な側面であり、安い人件費と大量生産によってコストメリットを最大限追求するいわゆる「ユニクロ現象」を高度に活用する術であろう。
尚、プリプレス工程は、市街地の別のオフィスで行われており、今回の見学コースには含まれなかったが、プリプレス工程はすべてデジタル化されているとのことである。その説明を聞き、ある東京の製版業者を思い出した。この製版業者は、インターネット回線を利用し、東京からテキスト原稿、図版を電子ファイルで、レイアウト原稿はPDFで上海へ転送し、現地のDTP業者が低料金でDTP加工、即座に東京に送り返すという作業を行っている。今後、大連においてもそのような事例は出てくることだろう。
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機械化が進んでいない部分は手作業で
カバーする
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工場はスペースの余裕があり、大量の
受注に対応できる
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| ■ 質疑応答
一通りの工場見学を済ませると、事前にこちらで用意していた質問状をもとにラン氏との質疑応答の時間を設けて頂いた。
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Q. 驚異的な経済成長はどのように影響しているか?
A. 現在、大連の印刷会社はおよそ600社で、大体は個人経営の小規模な会社です。カラー印刷のできる印刷会社はまだ少なく、現在15社ほどです。カラー印刷の需要は色々あります。開発区にある日本の企業(アイリスオーヤマ、オムロンなど)向けの需要も多いです。わたしの所では、パンフレット、小冊子などの印刷が多いです。高級印刷機のある印刷会社は、深セン、北京、上海に多いです。大連にも5年ぐらい前から、高級カラー印刷機が多く導入されるようになりました。例えば今は大連の印刷会社に三菱の印刷機が8台ほど導入されています。他にアキヤマ、コモリ、ハイデルなどが多く導入されています。大連市内の印刷会社の間では、相当競争が厳しくなっています。特に価格競争が厳しくなっています。わたしは、第一に品質、次に値段、次にサービスを大切にしています。わたしは以前、国営の印刷会社に勤めていました。しかし、ここ数年の間で、国営企業の多くは倒産しました。国営企業の勤務の後、いくつかの印刷会社で管理職に就き、自分で印刷会社を設立しました。わたしの会社は、まだ小規模な方です。顧客の利便性を考え、プリプレスはもう一つの市街地の事務所でやっています。製版は現在すべてコンピュータ化しました。市役所が、環境、騒音に非常に厳しいため、印刷工場は、工場が多い場所に置いています。
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予め用意した質問状
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Q. 印刷事業の許認可について
A. 政府の出版に関する規制は相当厳しいです。出版の許認可の権限は、遼寧省にあります。大連の印刷工場は多くなりすぎて、新しく印刷会社の許可をもらうのはちょっと難しくなっています。開発区(郊外の特別区)には、日本企業がたくさん進出していますが、大連市街地には、日本の(印刷の)合弁会社は少なく、1社だけです。会社を設立する際は、場所、資金(150万元/2千万円以上)、設備などの諸条件を満たさなければ許可がおりません。また、今現在、大連に工場を作るとしたら、土地(借地権)がとても高いこともネックとなるでしょう。
Q. 受注体制は?
A. 大連は小さな印刷会社が数多く存在し、競争は非常に厳しくなっています。品質が優れ、価格が安いところが受注できます。価格は量によって変わります。この辺は、だいたい日本と変わらないでしょう。
Q. 機械設備とメンテナンスについて
A. 中国産の印刷機械は、北京、上海製のものです。大きなものは2大メーカーによって作られます。単色、2色、軽印刷などは、中小の国産メーカーによって作られています。わたしの感覚だと、日本、ドイツのメーカーは断然いいです。使用時間が経つと歴然と違いがでます。
Q. 仕入れについて
A. はじめは日本製の紙が多かったですが、ここ2〜3年は少なくなりました。日本の紙の品質は非常に良いのですが、価格も高いです。代わって今は、日本製より3割ほど安い韓国製の紙がメインです。それと中国産の紙を使っています。国産の紙の品質は色のノリなどいまいちですが安いです。現状、必要とされる品質によって、韓国、国産の2種類を使い分けています。インクは日本の東洋インク(合弁会社)のものを使っています。PS版はほとんど国産を使っています。
Q. 社員の採用と給与体系について
A. 当社の社員は非常に若いです。特に包装など簡単な作業をする社員は若いです。印刷機の専門オペレータは10年ほどの経験者がいます。給与は、残業などの状況によっても多少変化しますが、ベテランのオペレータの場合、月給3000〜4000元(4.5万〜6万円)程度です。普通の社員の月給は1000元(1.5万円)程度です。社員は大連市以外の出身者が多く、1/3は会社が用意した寮に住んでいます。求人は、新聞や求人雑誌に求人広告を出します。あとは知り合いの紹介などで入社しています。
Q. 日本企業が大連に進出することは可能?
A. 合弁は比較的簡単ですが、規制や許認可の問題で、単独会社は難しいでしょう。最近は、日本の顧客からの仕事を請け負っています。これまで、日本からの仕事は、カレンダー、子供用の教材、楽譜などがありました。日本から直接依頼を受けたいのですが、中国の仲介業者を介して仕事を受けています。日本企業との取引は、ほとんどの場合、仲介業者を介した形が一般的です。日本企業と直接仕事をするには、まだ信頼がありません。可能であれば将来、日本企業と直接ビジネスがしたいと思っています。
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質疑応答の様子
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大連住友カラーが印刷した日本製品
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■まとめ
インフレが進み、比較的所得が高い大連でさえ、一般的市民の給水水準は、未だに日本の1/10以下である。衣料品の「ユニクロ」の例を出すまでもなく、中国の安い人件費を活用して、コストダウンを図ろうとするのは、厳しい競争の中で当然考えられることである。しかし、印刷業界においては、事はそう簡単ではなさそうだ。地域によって差はあるものの、印刷・出版物にかかわる中国当局の規制は非常に厳しく、中国に進出した日系の印刷会社の事例はまだ少ない。印刷業務一部をアウトソースするとしても、一般に品質管理の点でまだまだ多くの問題があり、きめ細かな対応と短納期が要求される日本の顧客の要求に耐えうるのか、印刷業界ではまだ事例が乏しく、現時点では未知数だろう。
しかし、今回見学されて頂いた住友カラー印刷工場は、品質管理に重点を置いており、エージェントを通してではあるが、日本企業との取引を徐々に始めつつある。印刷物の内容によっては、今後中国企業との取引の可能性もあるだろう。そのためには、ポスト・プリプレス工程においても、中国側に最新の技術(ソフト)と新しい設備(資本)を導入する要求が出てくるのではないだろうか。また、今回の見学コースには含まれなかったが、中国のプリプレス分野のデジタル化は相当に進んでいることが知られている。中国の都市部ではインターネットの高速回線が普及していることもあって、日本企業がDTP作業を中国の現地法人で行っている事例は既にいくつか存在している。例えば、DTP専門雑誌「プロフェッショナルDTP」では雑誌の製作にあたり、多くのDTP作業を上海の現地法人で行っている。20歳前後20名ほどの中国人スタッフが、日本語環境のQuarkXPress、Photoshop、Illustratorを扱い、日本語の雑誌の組版を仕上げているという。
今回視察した大連地区は、地理的に日本に近く、日本との合弁企業も多く、日本語の習得者も多い。プリプレス分野において大連は、デジタル化と高速インターネット回線をキーワードに、今後注目を集めるのではないか。いずれにせよ、このような中国の動向は目が離せないだろう。
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ラン社長から提供して頂いた記念撮影の写真
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(株式会社プレス/柳迫)
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